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東京高等裁判所 昭和56年(ラ)1086号 決定

抗告人 株式会社フジミ

相手方 江川善蔵

主文

本件抗告を棄却する。

抗告費用は抗告人の負担とする。

理由

一  抗告代理人は、「原決定を取消す。本件転付命令申請を却下する。手続費用は相手方の負担とする。」との裁判を求め、その理由として別紙記載のとおり主張した。

二  よつて判断するに、強制執行の基礎となつた債務名義に対する請求異議の訴等の提起に伴い、強制執行停止決定があることを抗告理由とするためには、右停止決定を執行抗告理由書の提出期間(民事執行法一〇条三項)内に提出することを要するものと解するを相当とするところ、本件についてみるに、本件記録によれば、抗告人は昭和五六年一一月二四日原決定の送達を受け、同月二八日原裁判所に抗告申立書を提出して本件執行抗告を申立てたが、右申立書には、「抗告の理由は追つて提出する。」との付記があるのみで抗告の理由の記載は全くなかつたこと、同年一二月五日別紙のとおりの抗告の理由が原裁判所に提出されたが、民事執行法一〇条三項の抗告理由の提出期限たる右同日までには強制執行停止決定が提出されなかつたことが認められ、抗告人の主張する事由のみをもつてしては原裁判の取消、変更を求めるに足る執行抗告の事由とはなしえないから、本件抗告は理由がなく失当といわざるをえない。

もつとも、本件記録によれば、抗告人は同月二三日に至り、同月二二日東京地方裁判所において本件債務名義に基づく強制執行を停止する旨の決定を得たとの「強制執行停止上申書」と題する書面と共に右停止決定正本を当裁判所に直接提出したことが認められるが、本件記録を精査するも本件抗告人につき執行抗告理由書提出期間の伸長を認めた裁判がなされたことは認められないから、右事由をもつて本件執行抗告の理由とはなしえないものである。

三  よつて主文のとおり決定する。

(裁判官 田中永司 安部剛 岩井康倶)

抗告の理由

一 債権者(相手方)は債務者(抗告人)に対する東京地方裁判所昭和五六年(ル)第三五六九号、同庁昭和五六年(ヲ)第六五〇八号債権差押え及び転付命令事件で昭和五六年一一月一九日別紙目録記載の債権につき同庁の差押、転付命令決定を受けた。

二 しかしながら、右命令の基礎となつた東京地方裁判所昭和五五年(ワ)第一九五三号和解調書第四項記載の違約金三〇〇万円の請求債権は存在しない。

債務者は右和解調書の執行力を排除するため債権者に対し、昭和五六年一二月二日東京地方裁判所昭和五六年(ワ)第一四一五七号請求異議事件、同庁昭和五六年(モ)第一六八九八号強制執行停止申立事件の各訴を同庁に対し既に提起し継続中である。

別紙目録〈省略〉

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